2012-02-29

world music current 7

個人的な話:
 日本から離れて一年半以上経った。ベナンに来てから特にここ最近は日本の音楽をほとんど聴いていなかった。コトヌーでバンドに入って音楽を始めてみて、日本の音楽というか今まで自分が慣れ親しんできた音楽(国籍関係なく)の大半は、感じている世界が違うようで演奏するための参考にならないように感じた。これは特にリズムの領域に限定してもいいのだが、今まで自分が貧弱ながらも持っていたノリ、自分が聞いてきた音楽を参考に自分でそれを感じてアウトプットするささやかな作業技術、が通用しない。ラインで流れてくる部品と自分の持ってる部品が全く噛み合わない、ラインの流れと自分のペースがちぐはぐ。だから、前から持ってる音源はあまり聴かないことにした。
 そんな訳で最近は、こちらベナンでは老若男女が踊りだすポリリズム(複数の拍子を同時もしくは連続に感じるようなリズム?と思っています。)な音楽、街角で聞こえるセレモニーの太鼓演奏や手拍子、いまだ年配層に根強い人気のあるサルサなどを一所懸命に聴いていた。どれも自分にとっては好きだけど聴いてもノリきれない音楽。なのにバンドで演奏する音楽のエッセンスはここら辺にある。そのエッセンスが自分の体にも染み込まないものか、と暇さえあれば体を揺らしたり太ももを叩いたりしている。「右手で四拍子、左手で三拍子。これは簡単だ。あれ、左手で四拍子、右手で三拍子にしたら、できないぞ。。」、「てくてくてく、てくてくてく(歩きながら)、3歩進んで5叩く、あれずれてるなあ、歩調は一定のリズムに保ちやすいから、、、おおっっと側溝に落ちそうだ。。」といった状態。
 といった感じで、このベナンで西欧列強(日本も)を警戒しつつ音楽的鎖国をしていたここ半年ほどですが、インターネットを繋いだら、もうそこは日本。Googleの言語設定がフランス語になっているせいなのか、漢字だけのキーワードを検索すると中国語のサイトばかりヒットしてくるが、ひらがなかカタカナを一文字入力さえすれば、もうそこは日本語空間。(基本の言語をフランス語に設定しながら、漢字を打ったら日本語サイトを優先的にヒットさせるという設定はできるのか?日本語設定の時に漢字を打って日本語サイトが表示されるというのは、中国語サイトを検索結果から排除するという意味なのか?ある漢字を打ったときに、日本語サイトと中国語サイトを言語の違いというポイントだけを除いて優先順位を決めて検索結果を表示できたりするのか?フランス語設定での漢字検索はそうなっているのかも?)\脱線しました\
 いつのまにか、暇な時はこのサイトhttp://www.kikuchinaruyoshi.net/を見るのが習慣になってしまった。何を隠そう、ここ三ヶ月くらいは私は「菊地成孔」さんのおっかけをやっているものです。といっても、彼の本の一冊もCDの一枚もラジオのオンエアも聞いたことがない。いくつかYoutube上のライブ動画やクリップを観たことがある以外は、ひたすらサイトの日記を読んでいるだけ。日記がけっこう長文で、数年分の日記がマウントされているので、かなりの量の文章が読める。日本に帰国したら、ライブに行ったり書籍を買ったりしたいが、ベナンにてインターネットで彼の日記とそのキーワードを検索するだけでも、それなりに楽しめる。ファッション、映画、格闘、音楽、料理、酒、デパート、ファンメールなどが頻出するテーマで、このテーマをいったりきたりしていて、どんどんと読んでしまう。きっとリズムがいいんだろう。
 ちゃんと彼の音楽を聴いたことが無いので、日記から推察するだけだが、ここ数年の彼の音楽のに共通するテーマとしてポリリズムがあるらしい(日記に書いてあった)。確かにYoutubeで観たDCPRGの曲「構造Ⅰ」http://www.youtube.com/watch?v=CO8AJbq81Ckなど明らかにポリリズムだった。日記にも、エレベータに一人で乗って両手でポリリズムを叩いていたり、久しぶりに電車に乗って走行するポリリズムを楽しんでいることが書いてあった。彼や彼のバンドのリズムはすげー、ということが日記にもほのめかされているし、きっとリズム感がいいんだろう。
 この人のことは、日本にいる時からテレビか雑誌を通して存在を知っていたのだけど、その頃は全然興味が無かった。ここベナンで彼に辿り着いたきっかけは、おそらくインターネットで日本語で「ポリリズム」とでも検索したのが始まりだったと思う(但し、ポリリズム+何か、で検索しないと結果が違ってくるが)。こっちで生活してみて、大半の人にとってはポリリズムは当たり前にある感覚で、そしてそれを演奏したり踊ったりするのは、とても気持ち良さそうに見える。その感覚があったら、きっと違う世界が見えるかもしれない、新しい身体性を持つことで今までと違う発想の問題解決ができるかもしれない、などと新興宗教に走る人達の気分はこんなものか、という希望が沸いてきてしまう。例えば、気功とか霊感とか超記憶術とか、あったら色々楽しそうなんだけど、まあ今のところ信じてない。自分にとっては、ポリリズムは肩こり解消とか近視矯正、などと似たような魅力がある。ポリリズム感覚は確かにここで存在するし、確かに自分にはない。日本人は持ってない人が多いだろう。そんなポリリズム欠落者にとっての宣教師というか、生活リズム指導とかも含めた怪しい教祖っぽい菊地さん。

「リズム感」の養成、なかなかいい娯楽じゃないだろうか。

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