2011-03-18

桜見

あの日、町が寝静まって静かだった夜

ぼくらは町を出た

夜の町をすいすい通り抜けて

穏やかな海のある西のほうに


途中休憩した山の中

しんしんと冷え込む冬の空気は

静かで

これが本物、なんだろうと思った


青く濃い空に、真夜中でも深く明るい宇宙


着いてみれば西の海は

波は荒く

風はときおり大きな音をたてる

けれどやっぱり静かに息づいていた


町の冬は

さっきまで遠くで

本当に静かにひとつの風景で


それが今、

あの夜の山の中で桜の木が咲き始め

桜見はもうすぐ

寒さに凍えるだれかと

そうじゃないぼくらの夢の中で

やすらかにはじまる

 
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