あの日、町が寝静まって静かだった夜
ぼくらは町を出た
夜の町をすいすい通り抜けて
穏やかな海のある西のほうに
途中休憩した山の中
しんしんと冷え込む冬の空気は
静かで
これが本物、なんだろうと思った
青く濃い空に、真夜中でも深く明るい宇宙
着いてみれば西の海は
波は荒く
風はときおり大きな音をたてる
けれどやっぱり静かに息づいていた
町の冬は
さっきまで遠くで
本当に静かにひとつの風景で
それが今、
あの夜の山の中で桜の木が咲き始め
桜見はもうすぐ
寒さに凍えるだれかと
そうじゃないぼくらの夢の中で
やすらかにはじまる